惚。

いま、
通学途中の地下鉄のなかで
いきなり知らないひとに声かけられました。

すみません、と。

なにか迷惑でもかけてしまっていたのか、と
内心おどおどしつつ
はい？と応えたところ

『カマキリついてます』

…。
……。
………。

ぎゃああ！

やや混み合った車内で
可愛らしさの微塵もない悲鳴でした。
いい迷惑だ。

でもだって。
僕の虫嫌いを知っているならわかるでしょうけれど
肩にカマキリって！ありえない！

ひとりパニックに陥りかける僕を見て
そのひとがあっさり手を伸ばして取ってくれました。
うん。

しかも
『ファッションじゃあなかったんですよね？』って…。
そんなファッションしているやつがいたら
是非ともお目にかかりたい。
…否、全力で逃げだします。あつぞこダッシュ。

まあ、そんなこんなで
僕の肩から見知らぬひとの右手の中に移ったカマキリは
そのひとと一緒に
池袋で降りてゆきました。

あー。
…惚れるかと思った！
吊り橋の法則で、どきどき倍増。

多分そのひとは、千川ユーザみたいなので
運がよければまた遭遇できるでしょう。
ちょっと生活にうるおい、が。

でもなぜにカマキリ！
もう！